症例紹介

Case77 子宮蓄膿症手術後に外陰部から排膿が続いた膣平滑筋種の犬の1例

食欲不振と嘔吐および下腹部が腫れているとの主訴で来院した14歳の雌のミニチュアダックスフントちゃんです。2日前の夜に他院を受診したが改善しないとのことです。

    手術所見 摘出中の子宮

 

血液検査、腹部レンントゲン検査、超音波検査から子宮蓄膿症と診断し点滴等の内科療法で症状の安定化を図り、翌日手術を実施しました。

 

 

 

 

術後の経過は概ね良好でしたが、外陰部から少量の排膿が続き、第11病日に肛門の周囲1〜6時方向に硬固なマスを触知しました。この腫瘤は初回手術時には認めなられませんでした。

       肛門嚢の確認
     マスの超音波検査所見

マスの発生場所から肛門嚢アポクリンも否定できないことから、肛門嚢との連続性の確認と超音波検査、針吸引生検を実施しました。

マスの超音波検査では不均一な充実性構造が確認されました。

針吸引生検の細胞診では好中球を主体とした炎症性細胞が採取され悪性腫瘍を示唆する異常細胞は検出されませんでした。

 

術後の外陰部からの排膿はこのマスが原因となっている可能性が高いと考え、14歳という高齢のワンちゃんに比較的短期間に2回の全身麻酔をかけることになりますが飼い主様との相談の結果、摘出することにしました。

       術中所見

会陰部よりアプローチし周囲組織との癒着を剥離してゆくと、この腫瘤は膣より発生していることがわかりました。

肉眼的に正常な部分で膣壁を切除し腫瘤を摘出しました。

 

 

 

        摘出腫瘤
        腫瘤の割面

 

摘出した腫瘤の病理組織検査で平滑筋種と診断され、中央部は壊死して化膿性炎症が起きているとのことで、子宮摘出手術痕の外陰部からの排膿の原因がこの腫瘤であることが確認されました。

 

ありません。