症例紹介

Case71 LGL(大顆粒リンパ球性リンパ腫)の猫の1例

4〜5日前からの元気食欲の低下と間欠的な嘔吐を主訴に来院した、14歳の雌の猫ちゃんです。
身体検査で中等度の脱水と腹部中央に腫瘤を触知したため腹部レントゲン検査を行いました。

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Fig1 腹部レントゲンLat像

 

レントゲン検査では結腸内ガスを認めた以外は著変はありませんでした。

 

 

 

 

 

 

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腹部エコー検査を行ったところ、最大径が約3cmの独立した腫瘤病変と空腸リンパ節の腫大を認めたため針吸引生検を行うこととしました。

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腫瘤に対し針吸引生検を行ったところ、多数の好塩基性顆粒を背景に多数の独立円形細胞が採取されました(左上)。

さらに拡大して見ると細胞質内に好塩基性顆粒が認められ、細胞所見から顆粒リンパ球性リンパ腫(低分化型)と診断されました。

本症例ではご家族が当初治療に対する迷いがあったため、副作用の出にくいステロイドの投与のみを行っていましたが、その後相談の上、ロムスチンを5〜6週間隔の予定で追加行いました。

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残念ながら完全寛解(臨床上病変の消失)には至りませんでしたが、心配した抗がん剤の副作用もなく、診断より5ヶ月経過した現在、腫瘤の大きさは直径で治療前の約半分となり元気、食欲とも安定し体重も1kg以上増加しました。

 

 

 

LGLリンパ腫は細胞障害性T細胞あるいはナチュラルキラー細胞に由来するもので、高齢の猫ちゃんの消化管が侵されることが多いことが知られています。

LGLリンパ腫の治療は化学療法が第一選択となりますが、細胞の性質上、パーフォリンという強力な細胞障害性メディエーターを分泌することにより、消化管に発生した場合しばしば穿孔を起こすことがあり、その場合は抗がん剤の投与に先立ち外科的治療が必要になることがあります。

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

ありません。