症例紹介

Case45 血小板減少症を伴った子宮蓄膿症の犬の1例

元気、食欲の低下と多飲•多尿を主訴に来院した6歳のワンちゃんです。
18日前から発情出血があったとの事でした。

身体検査で外陰部から薄茶色の分泌物が少量排出されていました。

Pyo1s
腹部レントゲン所見
Pyo2s
超音波検査所見

 

 

腹部レントゲン検査と超音波検査で子宮蓄膿症と診断しました。

 

同時に進めていた血液検査では白血球の増加とCRPの増加が認められました。これは想定の範囲内の異常でしたが、止血に必要は血小板72,000μl/l(200,000~500,000μl/l)と減少していました。

内科的な支持療法をして経過観察することにより血小板が更に減少するリスクがあり、また、他の凝固系の検査であるPT,APTT,FIBの値は正常だったため緊急手術となりました。

Pyo4s
卵巣動静脈のシーリング
Pyo5s
体外に誘導した子宮

 

 

手術は血小板減少していた事から、卵巣動静脈の止血は毛管シーリングシステム(ERBE社 VIO300D)を使用し止血には十分留意し、常法に従い卵巣子宮摘出を行いました。

子宮の内容物は赤褐色の膿で抗生剤の感受性試験と細菌の培養同定を行い、後日大腸菌が検出されました。

Pyo6s
子宮の内容物
Pyo3グラフ
PCVとPLTの推移

 

出血が無い事を確認して閉腹時しましたが、貧血の指標のPCVの値は、術前の35.8%から手術当日の夕方には27.4%、更に翌日には19.3%にまで減少しました。

この間の血小板(PLT)の値は72,000から66,000で推移したため輸血を行いました。
輸血後はグラフに示す様に貧血、血小板数とも急速に回復し、第4秒日に退院しました。

子宮蓄膿症は敗血症状態となっている事があり、本症例の様に血小板減少や貧血、腎不全など合併症を起こしている事があるので術前の詳細な体調評価と必要に応じた迅速な対応が求められます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

ありません。