症例紹介

Case38 嵌頓鼠径ヘルニアの犬の1例

かかりつけの病院で鼠径部ヘルニアと診断されていましたが16歳と高齢のこともあり、無症状なので手術を見送っていましたが、ここ数日大きくなり食欲がなく元気もなく嘔吐するとのことで受診したヨークシャテリア君です。

会陰ヘルニアs001
鼠径部のしこり

 

左の鼠径部に硬いしこりを触知しました。
しこりは硬く、また皮膚は赤くなり手で押し戻すことが出来ません。

写真手前のコブ状の部分がヘルニアです。

 

 

 

会陰ヘルニアs02
ヘルニアの超音波所見

 

何が脱出しているが確認するためエコー検査をおこなったところ、腸がヘルニアを起こしている事がわかりました。

食欲も無くなっている事から、嵌頓して腸に血液が行かなくなり壊死している可能性が高いので緊急手術となりました。

 

 

会陰ヘルニアs03
手術所見

 

皮膚を切開し癒着している脂肪を剥離すると腸が黒く壊死しているのが確認されました。

ヘルニア輪の大きさに比べ脱出している組織が大きく腹腔内に戻す事も出す事も出来ないなめヘルニア輪に切開を加え腸を体外に誘導しました。

壊死した腸は切除し吻合する必要があります。

 

会陰ヘルニアs04
手術所見2

 

写真左は腸管吻合を終了した所です。

脱出していた組織を腹腔内に戻しヘルニア輪は直接縫合しました。

術後は24時間絶食し、2日目から流動食を開始しました。

経過は順調で手術後4日目に無事退院しました。

 

 

鼠径ヘルニアは鼠径管に欠損部があると腹腔内容物である腸管、膀胱、大網、子宮が皮下のスペースに脱出することによって起こります。

脱出した組織が大網で嵌頓していない場合は腹壁の隆起以外無症状の事が多いですが、放置すると今回の症例の様に嵌頓による腸管の壊死が起こることがあり対応が遅れれば生命に関わる事もあるため、早期にヘルニア整復が勧められます。

 

調布市 つつじヶ丘動物病院

ありません。